樹と令子先輩。

令子先輩が目に涙を溜めて笑っている。
それを私と樹がポカ~ンと見ているのだ。
「ごめん。ごめんなさいね。クククク・・・・・」
「令子先輩、何か弟が変なことを言いましたか?」
「いえ、いいの。いいのよ。弟さんは何も変なことを言ったんじゃないの。気にしないで。」
「そうですか... ...」
「樹君だったかしら。今、何歳なの?」
「... ...18歳ですが...」
「そう、18歳なのね。」
「令子先輩?」
「いいの。気にしないでね。」
訳の分からぬ私たち姉弟はただ令子先輩を見ているしかない。
樹は私に「どうなってんの?」と目で訴えてくる。私は「知らん!」と目で訴え返した。
すると急に令子先輩は「やっぱり私、あなたの畑が見てみたいわ。」と言い出した。
その事にも意味が分からない私たち姉弟。
まぁ、令子先輩が畑を見たいと仰るからには見てもらわなければいけない。
でも、パンプス。黒光りしている綺麗なパンプスが汚れる心配をしている私。
「あの~、その靴では畑へは行くのはちょっと... ...」と樹が言った!
樹が令子先輩にパンプスでは行けない!と言ったんだ!偉いぞ、樹!それでこそ、お姉ちゃんの弟だ!
そして樹は倉庫から自分の長靴を出してきて「これ、大きいと思いますがパンプスは汚れないと思います。」と令子先輩に差し出した。
「まぁ~~~!ありがとう!嬉しいわ。(ニコニコ)」
「... ... ... ...」
樹が、樹が照れてる!令子先輩にお礼を言われて照れてる!こんな樹を初めて見たわよ。
この子でも照れることがあんのね。なんて感心したわ。
そして私と令子先輩と畑へと行った。




ウチの畑は家から歩いて2分。そう、家から見えているのだ。でも、働く姿は見えない。理由は畑が広すぎて人間が分かりづらいのだ。
「ここなのね。凛子ちゃんの畑って。広いわねぇ~~。」
「田舎ですから土地だけは広いのです。」
「でも、畑でも土地には変わりないないでしょう。フフフフ・・・・」
「まぁ~、土地ですよね。アッ!先輩、もしかして土地を探されているのですか?」
「あら、どうして?」
「だって、... ...」
「まぁ、探していないとは言えないわね。フフフフ・・・・・」
やっぱり!先輩は畑ができる土地を探していたんだ。だからウチへ土地の風景やら環境を見にきたんだ!こうなりゃ真剣に片山先輩に畑の云々を教えなくっちゃ!お父さんにも教えてあげよう!
「凛子ちゃん、ここは自然もいっぱいあってステキね。」
「(やっぱり!)そうでしょう~~!田舎ならでの季節折々がステキなんです!(ニッコリ)」
「ホホホホ・・・・・此処へ来て此処を見て凛子ちゃんって言うあなたが理解できたわ。それに樹君もね。(ニッコリ)」
「樹... ...令子先輩、弟が何か失礼でもしたのでしょうか?」
「何もされてないわよ。」
「だって先輩が笑っていたから。」
「ホホホホ・・・・・アレね。あなたと樹君が、あまりにも仲がいいからよ。今時、姉弟が仲がいいなんて珍しいもの。」
「そんなものですかね?」
「ホホホホ・・・・・・・」
そして令子先輩は一人で帰ると言い出した。
私は畑があるから送っていったのは勿論、樹。
「本当にごめんなさいね。じゃあ、樹君をお借りしするわね。」
「ハイ!樹、先輩をしっかり駅まで送ってあげるのよ。分かってる?」
「... ... ... ...」
「クッ!クククク・・・・・ハッ!ハハハハ・・・・ホント、あなた達って!」
そして私は畑に戻った。



「今日は楽しかったわ。ありがとう樹君」
「... ... ... ...」
「樹君って無口なのね。」
「... ... ... ...」
「ところで、片山君はあなたから見てどう?彼、良い人でしょう。」
「片山さ・ん... ...」
「ホホホホ・・・・彼って凛子ちゃんの家の畑に興味があるのよね。」
「あの、須藤さん。お伺いしますが片山さんは彼氏さんなんですよね。」
「彼?片山君が?ホホホホ・・・・・・そう見えて?」
「だって、ねーちゃん...姉には不似合いですから。」
「でも、不似合いと思っているのは樹君だけかもしれないわよ。」
「... ...ねーちゃん...姉は素朴なんです。就職したのだって姉は、ただ都会に憧れているだけで... ...」
「お姉さんが心配?」
「そりゃ心配です!会社で先輩方に苛められてはいないかとか悪い男に騙されはしないかとか... ...」
「樹君ってお姉さんのことが本当に好きなのね。でも、凛子ちゃんはいつも一生懸命だからカワイイのよね。それに3課の皆は凛子ちゃんのことが好きだし。あなたが心配している事はないわよ。」
「でも、片山さんは?もしかして姉のことが好きなんじゃないんですか?」
「鋭いわね!もし、片山君が凛子ちゃんのことを好きだとしたら樹君はどうする?」
「阻止... ...絶対に阻止します。須藤さん、考えても姉と片山さんではおかしいでしょう。姉を騙すつもりなんです。片山さんは田舎者の姉を騙すつもりなんだ!」
「... ... でも、たとえ片山君が凛子ちゃんを好きだとしても凛子ちゃんは気付くかしら?」
「それは... ...姉は鈍感ですから気付かないと思います。それに天然だし。」
「ホホホホ・・・・・・私もそう思うわ。でも、これは私と樹君との内緒ね。」
「はい。須藤さん、これからも姉を宜しくお願いします。姉を守って下さい。きっとですよ!」
「分かったわ。ホホホホ・・・・・・」
「じゃあ樹君、ありがとうね。また会いましょうね。」
「須藤さん、本当に姉のことを宜しくお願いします。アッ!田舎だけどまた遊びに来て下さい。俺、須藤さんが家に来てくれることは大歓迎ですから。」
「ありがとう樹君。」

そして俺は須藤さんが電車に乗るのを確認してから家に帰った。
だけど、片山さんはどういうつもりなんだ?部署も違うねーちゃんに何故、付きまとっているんだ?ねーちゃんが田舎者だから何かと都合がいいのか?
ねーちゃんはアイツに騙されようとしている!
それに、ねーちゃんが泣く姿など見たくない。
絶対に阻止しなくてはならない。
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by everlasting-lif | 2014-01-09 09:34 | 雨のち時々晴れ。 | Trackback | Comments(0)

いろいろな出会いがあって、楽しい事も考える事も。たまには悲しいことも。後悔も。


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